公益社団法人 地域医療振興協会(JADECOM)は
プライマリ・ケアの研究ネットワーク
JADECOM-PBRNを運営しています。
PBRNとは
PBRN(Practice Based Research Network)とは
主にプライマリ・ケアを中心とした外来診療を実践する多施設の医療者達で研究のために組まれたネットワークの事です。
日本では聞きなれないかもしれませんが、欧米では国を挙げて取り組んでいるケースもある臨床研究ネットワークの仕組みです。
多くの臨床研究は高機能病院で専門家が行い、疾患が単純な方を対象に臓器や数値を突き詰めるのが一般的です。
そのような研究を元に示されたエビデンスやガイドラインは、地域医療の現場では利用できないことが多々あります。
例えば「数値がいくつになったら専門家に相談しましょう」というガイドラインがあっても、地域の診療所ではまず専門家がどれくらい近くにいるのかわからず、全く違う対応を迫られるかもしれません。
地域の現場に即したデータを集めて研究する事が、プライマリ・ケアには必要なのです。
そのような課題を解決するための研究組織がPBRNです。
PBRNの研究は現場の臨床家の経験と見識をもとに課題を特定し、それをリサーチクエスチョンとして定式化して研究を行い、 日常診療に容易に取り入れられる結果を導き出します。
以下は人口1,000人に対する医療の状況を調査した図表です。
1,000人中862人が何らかの症状を抱え、307人が医療機関を受診し、改善しなければ病院や大学病院などへと移っていきます。
高機能病院で行われる通常の研究が1,000人中6人しか対象としていないのに対し、PBBNでは無症状の人も含め1,000人全員を対象に研究が行われます。
日本の人口1,000人あたりの健康問題・医療利用の数
PBRNは地域医療全体を俯瞰する事により、地域の現場に即したデータや解決法を研究するのみならず、地域医療の現場から情報を発信するという社会的役割を担っています。
また医療従事者の方々に地域医療の魅力を伝え、へき地・地域で働く人員を増やして住民の健康福祉への寄与も期待できます。
これからの我が国に必要な、大変優れた研究ネットワークがPBRNなのです。
JADECOM-PBRNについて
地域医療振興協会では約40施設ほどのプライマリ・ケア診療所を運営していますが、多施設が連携した臨床研究は長らく行われていませんでした。公益社団法人として、地域医療を促進していく組織として、我々は地域の現場から臨床研究データを発信していく責務があります。そこで多施設が連携して臨床研究をするネットワークとして、2018年にJADECOM-PBRNを発足させました。
組織運営を担うのは、地域医療振興協会の運営施設で地域医療の臨床を行う現役の医療者たちです。
医療者たちが日々の診療で感じる疑問や不安を共有し、課題を解決する研究を行っています。
また研究データに基づき医療の質を向上させ、地域の方々の健康に寄与する事を目指して活動しています。
JADECOM-PBRNは日本の地域医療と世界の研究を結ぶ架け橋にもなっています。2017年からOHSU(オレゴン健康科学大学)にリサーチフェローを年単位で派遣し、米国家庭医療の現場を体感するとともに、家庭医療の一流研究者の指導を受けています。 また、逆にOHSUから医師、レジデント、研究者らを招いて日本の地域医療を紹介し、相互交流を深めています。そして、PBRNによる研究で得られた知見を海外学会で発表したり、英語論文として出版するなど世界へ向けて発信を行っています。
JADECOM-PBRNは、地域医療の最前線で活躍しながら研究や国際交流も満喫できる地域医療振興協会の研究ネットワークです。